2013.6.17

 

唐突ですが「久しぶりのロサンゼルスで感じたこと」

小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
 

(左)友人宅の屋上より。その昔は危険で入れなかったようなエリアが様変わり。(右)独立系のコーヒーショップでなごむ人が一杯。

少し前、久しぶりにアメリカ西海岸に行く用事がありました。学生〜社会人にかけてロサンゼルス付近に通算4年ほど住んでいました。永住しようかなと思っていましたが1回目の結婚がうまく行かず。日本に帰ってきてからはちょっとした用事でアメリカに入国することはあったのですが、ちゃんと行ったのは約10年ぶり。行く前はあまり期待していませんでしたが、結果的にその変化にいくつも驚いたことがあったので綴ってみることにしました。

まず第一に、LAダウンタウンの変貌ぶり。約10年前もstandard hotelが出来たりフツフツと何かが起こりそうな予感はしていましたが、当時LAダウンタウンは基本的には危険であまり近寄らないように言われていたエリアであり、人が住むような環境ではなかったのです。ところが、今回行ってみると、古い工場街が様変わりしていて、倉庫や工場をコンバージョンした住宅などが続々と誕生していたり、たまり場になっているコーヒーショップや夜な夜な出かけられるレストランやバーが沢山できていました。ロサンゼルスという典型的な郊外型の街で、やっと街の中に住むという文化が10年をかけて始まったということは、昔のLAダウンタウンを知るものにとっては衝撃的な風景だったのです。

(左)元おもちゃ工場がコンバージョンされた分譲マンション。コンクリートの外壁や躯体が再利用された。(右)今度は赤煉瓦の倉庫をコンバージョンして分譲マンションになる予定らしい。

そしてもう一つ驚いたのは、当り前のようにテレワーク(在宅勤務)が進展しているということ。ある友人の奥さんは、職場に通勤するのが週3回程度で、あと週2日は家で仕事しているとのことでした。一般的なオフィスワーカーなのですが、スカイプやテレビ会議システムを利用することで、十分に事足りているらしく、子育てを考えるとその方が生活しやすいし、会社側も通勤費の負担や従業員の満足度を考えると、テレワークを推進する方が賢明という事のようです。

もう一人の友人はフリーランスの建築家なので本人は在宅ワーカーなのですが、奥さんは大手コンサルティング会社の役員をしている方。そのコンサルティング会社では非常に早いスピードで仕事場環境が変化していっているそうです。10年前のオフィス環境は下の図の左のような状況で、役員や上席者は窓際の景色が良いところに個室を持っていました。それが数年前から事務所に長い時間居てハードワークをする一般従業員の席を窓側に、外に営業に行くことの多い上席者の席をオフィスコアの景色が良くない場所に移すのが主流となったのです。この頃フリーアドレス制の導入が始まったりもしました。それで最近はというと、上席者の席(いわゆるボス席)はなくなってしまい、外で営業してくるか、自宅で仕事せよということになってしまったようです。その奥さんが働いている会社では最近オフィスを引っ越したらしく、当然のようにボス席をなくしてオフィススペースを3割減らしたということでした。もちろん日本でもこのような働き方を導入している企業もあるし、会社経営者や個人事業主は既に実践している話ではありますが、ここまでそうした環境が一般的になっていることに正直驚きました。

友人が図示してくれたスケッチをキレイに書き直したもの。10年で大幅に働き方が変化していました。(クリックすると拡大して見られます)

そして街の中を見渡してみると、昔に比べると物販店が減ってきているように感じました。インターネット販売がより進化し、街の物販店のパイを食っていっているのでしょうか。その代わりに勢いを感じたのは、飲食店やコーヒーショップ。少し景気が盛り返して皆お金を使い出しているということもあるのかもしれないですが、なんだかテレワークが進んで家で仕事をする人が増えた分、みんな外での飲み食いや人との繋がりの場に出たがっているのかもしれないです。家でこもって仕事をすると、気分転換に近所の美味しいコーヒーショップに出かけたり、夕方になると外に食事に出たくなるものですよね。僕も一日中家で仕事すると同じ感覚になるので良く気持ちがわかります。

(左)家でこもって仕事した後は、レストランで食事という気分の人が多いのでしょうか。どこのレストランも人で一杯。(右)コーヒーショップで気分転換したくなるの、良くわかります。

テレワークがすべてを解決するものではないと思います。ただ、仕事をする環境を選ぶことが自由にできる人が増えたり、住みたい場所に住んで働くことが可能になったり、家族と過ごしたり子供を育てる時間を大切にしたり、近くのコーヒーショップで地域の人と雑談したりする時間を増やしたり、テレワークはより人生を豊かにする解決策になるような気がします。また大企業がテレワークに真剣に取り組んでくれると、その下請けのフリーランスの人たちは遠隔地で仕事する(=自分の好きな環境で住み働く)という社会に一歩近づくと思ったわけです。

これを例えば神戸に置き換えて見ると、山の麓の坂の上の見晴らしの良い住宅で、海や山を見ながら仕事をして、家族との生活も大切にしながら、気分転換には坂の途中のコーヒーショップで仕事したり、夕方には近所のレストランにご近所さんと集まるというような事になります。もう既にやっている人も居ることですが、まだまだマイノリティー。でも久しぶりのロサンゼルスに行ってみて、意外に近い将来そうなるのではないかと思ったわけです。

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このブログについて
 

山と海に囲まれた街、神戸に移り住み5年。引越魔だった私が神戸に定住できたのは、この街の居心地がとても良いから。 そして神戸で会社を始めたのも、この街に住み続けられる仕事というのが大前提にあったから。居心地のわけをお伝えして参ります。


著者紹介
 

小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
小泉亜由美(神戸R不動産/Lusie Inc.)
西村周治(神戸R不動産/Lusie Inc.)
岩崎大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)

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